イジワル専務の極上な愛し方
一瞬、構える自分がいるけれど、平静を装っていなくちゃ……。そう思い、彼へ会釈をし身を翻そうとした瞬間、祐一さんが口を開いた。

「それにしても、本当に驚きました。まさか、ここで彩奈に再会するなんて」

笑みを浮かべて話す祐一さんに、私は内心ギクッとする。私のことを、気づいていたんだ……。それにしても、なんてタイミングが悪いの?

「浅沼社長、そうなんですか?」

翔太さんは、冷静にそう聞いているけれど、きっと本心ではかなり気になっているはず。

そんな翔太さんに、祐一さんは頷いていた。

「はい。実は、学生の頃に付き合っていたんですよ。なあ、彩奈」

「えっ!? は、はい……。でも、もう別れて五年くらいは経ちますよね……」

まさか、付き合っていたことまで話すなんて……。祐一さんが気づいていないだろうと安心したのも束の間、翔太さんに知られたくないことを話されてしまい、かなり動揺していた。

「たしかに、それくら経つのか……。どおりで、彩奈が綺麗になってると思ったよ。こうやって、再会できて嬉しい」

笑みを浮かべた祐一さんは、笑みを私に向ける。だけど、気まずさしかない私は、彼に応えることができない。もちろん、作り笑いすら、向けることはできなかった。

こんな話を聞かされて、翔太さんはどう思うだろう。祐一さんのことを黙っていたことを、きっと怒っているはず……。

怖くて彼に目を向けられない。すると、翔太さんの静かな声が聞こえてきた。

「それは、すごい偶然ですね。でも、今はビジネスのお話をしましょうか?」

”専務”としての翔太さんは、怖いくらいに冷静で、祐一さんの話にはまるで興味がなさそうにすら見える。でも、本当のところはどうなんだろう。

彼の本心が分からなくて、不安でいっぱいになってきた。

「そうですね。失礼いたしました。それじゃあ、彩奈またあとで」

あとでって、どういう意味なんだろう。ますます気まずくて、黙って会釈をすると部屋を出た。

さっき顔を合わせたときには、まったく無反応だったのに。祐一さんは、いったいなにを考えているの……?
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