イジワル専務の極上な愛し方
最初に翔太さんがそう言い切ると、社長は大きなため息をついた。

「分かった。お前の意思が硬いのは、よく理解しているつもりだ。では、田辺さんのほうはどうなのかね?」

社長に尋ねられ、さらに緊張が増す。もっと、露骨に反対をされるのかと思ったけれど、意外にも社長が翔太さんの思いを受け止めていて戸惑ってしまった。

私がきちんと思いを伝えられれば、翔太さんとの交際を認めてもらえる……?

体が震えそうになるけれど、自分を奮い立たせて社長を見つめた。

「私も、翔太さんが好きで、別れたくないと思っています。もちろん、この先もずっと彼の側にいたいです」

少し、声が震えてしまった……。社長には、私の言葉がどう映っただろう。

そんな簡単には、許してもらえないだろうな……。ただでさえ、仕事で迷惑をかけているのだから。

社長は一つ息を吐いてから、諦めたような口調で言った。

「お前たちの交際には、反対しない。そんなことをしても無駄だと、長男のときでよく分かった。ただ、業務に支障が出ているのはたしかだ」

「はい」

返事をすると、翔太さんと言葉が重なる。まさか、こんなにあっさり許してもらえるとは思わなくて、まだ半信半疑だ。

それに、仕事の話が社長から直接出てきて、背筋が伸びる思いだった。

「浅沼社長との取引は、うちとしても派手なプロモーションができていい宣伝になる。ファッション業界とのパイプを、作っていきたいと思っているんだ。だから、仕事を成功させること。それができたら、二人の結婚を認めよう」

「親父、本当か?」

翔太さんは身を乗り出さんばかりに、真剣な眼差しで社長を見ている。すると、社長はゆっくりと首を縦に振った。

「ああ。これは、お前たち二人に課す私からの問題だ。クリアにして、会社の利益を守ること。それができたなら、うるさいことは言わないでおこう」

社長から課される問題……。それを解決できれば、翔太さんとの未来も希望が持てれる。それなら、頑張るしかない。

心のなかで密かに気合いを入れながら、チラッと翔太さんに目を向けた。

口を堅く紡いで黙っている。社長の言葉を聞いて、翔太さんはどう思っただろう。私と同じ気持ちだと、嬉しいな……。

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