憧れのアナタと大嫌いなアイツ


「本当は辞令が交付されてから
君に伝えるつもりだったのに・・・」


柊とのことがあって焦ったと室長は寂しい顔でそうこぼした

シンとした車内で室長の放った言葉が頭の中でリフレインしていた

「困らせるつもりじゃない
ただ黙ってる訳にいかなかった」

室長からの告白に
正直戸惑っている私

柊とのことがなければどんなに嬉しかったことか

ということは・・・

答えなんて考える間もなく決まっている

休日にわざわざ来てくれた室長のことを考えるなら

曖昧な返事は出来ないと

「室長には話してなかったんですけど
私の男性に対しての恐怖心って
家元が原因なんです・・・。」

高校三年生で柊と出会ったこと
そこでの経緯を他人に話すのは初めてで戸惑う

だから・・・女子社員の憧れの的の室長に
憧れているだけで良かった

みんなより少し優位に立っていることだけで充分で
それが告白するとか交際に発展するとか
そこまでは考えてもいなかった

手の届かないアイドル的な存在だった・・・

真っ直ぐ室長を見ながら
想いを込めて全て伝えた

「よく話してくれたね」

手を伸ばして頭を撫でてくれた

「タイミングじゃなくて・・・
7年前から決まってたようだな」

そう言って車のエンジンをかけた





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