憧れのアナタと大嫌いなアイツ

強引さからは想像もつかないような
優しい口付け

触れては離れて

そのたびに合わせられる視線が熱い

「好きだ」

「すっげぇ好き」

頑なな心がゆっくりと解かれる

柊の瞳が夜景の灯りを纏って揺れて艶めいている

ーー男性なのに凄く色っぽいーー

少し緩んだ気持ちと唇をこじ開けるように
滑り込んできた激しい口付け

「・・・んっ・・・ん」

息が・・・苦しい・・・っ

柊の胸を叩いてなんとか離れると

「鼻で息してろ」

濡れた唇でクスっと笑った柊

如何にも慣れてます風の物言い

それが悔しくて

「な、仕方ないでしょ!こんなのしたことない・・・」

とここまで口にしてハッと気付いた
大人のキスが未経験なんて・・・

恥ずかしいことをペラペラと

カーッと熱くなる顔を上げられず
俯いて腕の中から逃げ出そうとするのに

長い腕の中は力が入ったままで
更に密着度が上がった

後頭部に添えられた手が
ポンポンと規則正しく温かくて

「嬉しいよ・・・花乃」

そう言った柊の声が甘くて
また強く打ち始める心臓が壊れそう

「は、離れて」

「もう少し・・もう少しだけこのまま」

頭の上から降った甘く切ない声に
それ以上の否定の言葉は出てこなかった







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