憧れのアナタと大嫌いなアイツ

「外、見てみるか?」

変わらず穏やかな表情で微笑む柊に何度も目を奪われる

帰りたいのに合わせた視線を外せそうにない私はそのままコクコクと頷く

リモコンを操作すると
壁の重厚なカーテンが開き始め
それに合わせるように照明が消えた

「わぁ」

キラキラ輝く夜景が飛び込んできた

「綺麗だろ」

「うん」

「花乃の方が綺麗だけどな」

「・・・っ」

目を見開くと視界の中の柊がジワリと動いた

「花乃」

「俺が怖いか?」

「・・・うん」

もう一度頷いたところでふわりと抱きしめられた

えっと、怖いと聞かれて頷いたはずなのに
抱きしめられるとは・・・

0パーセントの経験値での検索を諦めてとりあえず抗議することにした


「ちょ、は、離れて」

「やだね」

クククと喉を鳴らして笑う柊

「怖くても離してやれねぇ、だから」

「だから・・・?」

腕の中でもがく私を更に閉じ込めた柊は

「だから、慣れろ俺に」

「は?」

都合良く言い放った声に唖然としていると

首を傾けた柊はチュッとリップ音をさせて
オデコに口付けた

フワリと鼻腔を掠めるシトラスの香りと
ドンドン強く打つ心臓が煩い

驚いて顔を上げると

また近づいた顔

ーーキスされる!ーー

仰け反って逃げようとしたのに
後頭部に回された手がそれを阻んだ




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