憧れのアナタと大嫌いなアイツ
アナタとアイツ

動き出す気持ち


驚いてドアを振り返った柊とその肩越しに視線を向けた私の目に飛び込んできたのは

「・・・っ」

「てめぇ」

怒りを孕んだ目で柊を見る弟、花流だった


慌てて車を降りると
運転席の柊は花流の手で襟首を掴まれて降ろされていて

「は、花流?」


今にも殴りかかりそうな花流に必死で声をかけるのに視界にも入れてもらえない

そのかわり・・・

「花乃!携帯見てみろ」

いつもの花流の声よりずっと低い声が降った

「え?」

慌ててハンドバッグの中をかき回すとスマホを取り出す

「うそ」

ホームボタンを押しても反応しない携帯

ーー電源切ったかしら?ーー

ーー充電切れ?ーー

リンゴマークが見えた焦る私の目に飛び込んできたのは大量の数字がついたアイコン達だった

着信履歴、未読メッセージ・・・
全部花流からのもので

『花乃、寄り道か?』
『出かけるなら母さんに連絡入れて』
『花乃大丈夫か』
『どこ?』
『連絡くれ』

「ごめん花流、気づかなくて」

掴まれている柊よりも心配してくれた花流が気になった

この7年間、誰より私のことを理解して寄り添ってくれた花流

「俺が無理矢理連れ出した」

そう言った柊と謝り続ける私に挟まれて
最後は手を離した花流

「花乃!家へ入るぞ」

背中を向けて歩きだした花流を追い掛けた私は
背後の柊を振り返ることはしなかった







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