憧れのアナタと大嫌いなアイツ

家に入ると“ご飯の連絡くらいしなさい”と笑った母にペロっと舌を出すと二階へ行ってしまった花流を追いかけた

「花流、入るね」

ドアを開けると花流はベッドに腰掛けていた

「ごめんね花流」

「もういい」

素っ気ない返事に泣きそうになる

「麻美さんに聞いた」

「え?」

連絡の取れない私を不思議に思って麻美に連絡した花流は柊に連れ出されたことを知って焦ったと話した

「ずっとアイツの所為で花乃が不安定だったのに・・・」

思い出しながら顔を歪める花流に
柊に連れ出されてからのことを話す勇気は無くて

「ごめんね」

本当は心配してくれてありがとうなのに
何故だか謝っていた

「・・・のか?」

「え?」

「だから、アイツと居て嫌じゃなかったのか?」

そういえば・・・
苦手とか、怖いとか・・・思ったけど
嫌だなんて思わなかった

それに・・・
『好き』と言われてときめいた胸
ファーストキスもセカンドキスも
強引に奪われたけれど

嫌じゃなかった

あの、射抜くような漆黒の瞳に
煩い程打ち付けた心臓と

抱きしめてくれた温もりも

触れた唇も

嫌じゃなかった


「・・・うん」

「そっか」

悲しそうに微笑んだ花流は
いつものように頭をポンポンと撫でると
“寝る”とベッドに横になって背中を向けた

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