憧れのアナタと大嫌いなアイツ

撮影の予定も滞りなく終了してカメラマンとアシスタントが機材を片付ける合間に

藤堂室長に今後の打ち合わせに関しての質問をしようと部屋の隅に立っていた


「花乃」


入り口を背にして立っていた背後から
突然聞こえた声に肩がビクッと揺れる

「あぁ、悪りぃ」

見上げた柊の顔は悲しそうに歪んでいて
揺れる瞳がそれを更に深くしていた

「大丈夫、驚いただけだから」

そんな顔しないでとばかりに
柊に向けた笑顔に

「そっか、悪かったな」

釣られるように笑った柊の
蕩けるように変化した瞳を見て

急に忙しなく打ち始める心臓

熱くなってゆく頬の変化を誤魔化すように
パタパタと手で顔を扇ぐ真似をすると

「煽ってんのか?」

スッと間合いを詰めてきた柊の
低くて甘い声が降る

「え、え、え?」

なんでもないこの状況で“煽る?”の意味も分からず酷く焦る私を見下ろしながら

クククと喉を鳴らして笑った柊

さっきと違った笑顔にまた跳ねる胸

ーー私、大丈夫かしら?ーー

大嫌いだったはずの柊に
こんなにも分かりやすくドキドキさせられて

まるで





ーー恋してるみたいじゃないーー











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