春を待つ君に、優しい嘘を贈る。

渡り廊下の前を横切ろうとした時、耳を劈くような音が何度も響いた。

何か硬くて大きなぶつかったり、擦れたりするような音。

思わず顔を顰めれば、隣に立つ聡美も同じような顔をしていた。


「なに、今の…」


次いで聞こえてくるのは、男の呻き声。

喧嘩でも起きているのだろうか。

変なことに巻き込まれないうちにこの場から去ろう、と逸る気持ちで聡美の制服を引っ張ったのだが、既に時は遅く。


「てめえがいけねぇんだろうがっ!神苑に逆らったからよ!!」


「(っ…!)」


転がるように現れたのは、顔を赤く腫らし、鼻血を出している男子生徒。

その後ろからは龍の腕輪をつけている男子生徒が三人。神苑のメンバーだ。


「すみません!すみません、すみませんでしたっ…!」


男子生徒は何度も謝っているのに、神苑のメンバーは楽しそうに蹴っては殴っている。

遠巻きに見ている人間や通行人は見て見ぬふりをしていた。
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