異世界トランスファ
「怒んねえのか?」

「・・・怒ってる・・けど、今は嬉しい方が強いかな」

「なんで?」

「案の定ね、ギンに嫌われたと思ってずっとモヤモヤしてたんだよ」

「・・うぐ」


わざと睨んでギンの目を見つめた。


言いたい事は言ってやる!今しかないもんね!!


「いっそ嫌いになれたらどんなに良いだろうかって思った」

「・・・」

「でも、思い浮かぶのはこの顔だし」


悔しくてほっぺを伸ばしてやった。

でも本当は・・。


「ヒオリ・・」

「皆が教えてくれたの、ギンは私の為に今動いてくれてるって・・半分しか信じられなかったけど」

「・・うん」

「でも・・信じて待ってたんだよ」


ぎゅううううっ

と思いっきり抱きしめてやった。

また涙が溢れそうになって。



いつもなら苦しそうな声が聞こえるハズなのに、見上げるとギンは目を潤ませてて。


「お前に・・俺との子が出来たって聞いて・・今こんな事してる場合じゃねえって思って」

「え゛?」


そこは私も一番悩んだし、驚いてた所ですけどね。


「嬉しすぎて・・もう、いてもたってもいられなくて・・飛んできた」


「・・そう言ってもらえて・・・凄く嬉しい」


「だからすまねえ!!勝手で・・・すまねえ・・お前を振り回しといて・・・」


ギンもきっと葛藤してくれてたんだよね。

私をもとの時代に戻すっていう使命感で頑張ってくれてたんだもんね。

今ならわかるよ。正直に言ってくれたしね。


するとギンは目をキラキラと輝かせて、突然私のお腹をさすってきた。


「そうだ!!俺達が愛し合った証拠がここにあるんだよな!あ、いるの間違いか!」

「ぶはっ。めっちゃ恥ずかしいセリフ。やめてよもう」

「るせえ、本当の事だろうが!早くでてこーいチビ~」

「馬鹿・・・ふふ・・ヤバ・・笑いが止まらない、涙も・・ははは」





ああ、今人生で一番幸せな時かもしれない。

私はこの人と生きて行きたい。






全て愛おしくなった瞬間だった。
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