クール彼氏とツンデレ彼女
「ちょっと、悲鳴あげるなんてひどいなあ」
そんなこと言われても、いきなり現れた人に対して悲鳴あげるなってほうが無理な話だ。
私が声を上げたからか、井下と水口は言い合いをやめ、お姉ちゃんを見ている。
「こんばんは、紗知の姉の怜南です」
お姉ちゃんは勝手に自己紹介をした。
「超美人……」
「お、君いいね。君が紗知の彼氏?」
こんな人混みの中でも水口の小さな呟きを聞き逃さないあたり、さすがお姉さま。
「いえ、彼氏はこいつです」
水口は井下を指さした。
井下はその指を普通は曲がらないほうに曲げた。
水口は痛がり、逃げる。
「ふむふむ……」
お姉ちゃんは井下を、つま先から頭のてっぺんまでじっくりと見た。
「なにか?」
井下がそう言っても、お姉ちゃんは答えない。
「うん、悪くない」
じっくり見てそれですか!?
「もう、なにしに来たの、お姉ちゃん!」
「紗知の彼氏を見に来ただけよ」