ヒロインの条件

しばらく二人で練習を見ていたが、ふと「ここにさあ」と千葉が口を開いた。

「四年生ぐらいだったと思うけど、えらいチビのやつが入ってきたの覚えてる?」
「うーん?」
私は首をかしげたが、結構生徒は入れ替わっていたので、はっきりとは思い出せない。

「黒縁のメガネかけて、女みたいにひょろひょろしてんの。でもすっごい負けず嫌いで、いっつも俺たちにつっかかってきてた」
「いたような気もするかな」

一生懸命思いだそうとすると、ぼんやりと輪郭が現れてきた。そういえば髪の色素が日本人の割に薄かったような気がする。

「よく考えてみたんだけど、昨日の、佐伯って言うんだっけ? そのひょろひょろじゃないかと思うんだよね」
千葉が腕を組んで言った。

ぶわっと興奮が体を駆け巡る。もしかしたらその子が佐伯さんかも!

「顔似てる感じ?」
「覚えてねーけど、でも昨日の人をどっかで見たなっていう感じはあるんだよなあ」

ああ、ワクワクする。謎解きが成功したような喜びだ。
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