【短】Wonderful Moment
「…新田さん…俺と付き合ってくれる?」

「…な、…」


こんな都合のいい展開は、きっと夢だ。
私は、未だ手を掴まれたままで、俯いた。


だって…。


こんな風な感情は、私の一方通行だと思っていたから。


「…いや…?」


少しだけしゅんとなる彼の声。
それに胸がきゅうんとなってしまう。


「いや、じゃない…でも」

「でも…?」

「なんで?」


謎は深まる。
彼と私じゃ共通項がなさ過ぎて、全然彼の行動の意味が分からない。


「んー。なんで、か…それは、相手が新田さんだから、じゃ駄目?答えにならない?」

「え…?」

「俺ね、クールだなんだって言われるだけで、結構遠巻きに見られてあんまり人が寄って来ないんだ…新田さんも知ってると思うけど」

「でも、あんなに友達が…」

「あぁ…あれは皆俺と一緒にいるってステータスが欲しいだけみたいだよ。…別に俺なんかといたって、良いことないのにね」


はは、と笑う彼が、凄く寂しそうで思わず私は俯いていた顔を上げた。
そして、ふるふると首を振った。


「海洋くんは、”なんか”じゃないよ?ちゃんと、海洋くんのこと見てる人は、いるから」


伝われ…。
お願い伝わって。


そんな思いで、私は彼の顔を覗き込んだ。
彼は私を見つめることを止めない。
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