突然ですが、オオカミ御曹司と政略結婚いたします
「ガキ」

 つぶやいて、シーツの上にあった黒のノーカラーシャツを頭からかぶった。

「これを越えてきたら、明日は床で寝てもらうから」

「そんなこと言っていいのか? お前、寝相も悪そうだけど」

 彼の口角が、怪しく上がる。

「悪くないわよ!」

 眉を顰め、勢い良く布団へ潜り込んだ。ふっと笑みを零すのが聞こえてきて、電気が消える。シーツが擦(こす)れる音と布団が自分以外の力で動いている感覚が伝わり、彼がすぐそばにいることを実感した途端に緊張が高まった。

 色んなことがありすぎてどっと疲れた。でも、そのおかげで、こんな状況でも少しは眠れそう。

 明日からも続くであろう戦いに備え、私はゆっくりと目を閉じた。
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