夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】
まさにその時。
一瞬で、私の熱を冷ますような出来事。
「……っ。
……リ……ディア」
ーーーえっ?
私は、静かに呟いたバロンを見た。
彼は、寝てる。
でも、今確かに……名前を、呼んだ。
”リディア”って、知らない、名前。
別荘で一緒に働く使用人の中にも。
今まで別荘を訪れた客人の中にも……。
そんな名前の人は、いない。
ーー誰?
今、貴方が呼んだ人は誰なの?
ドキドキはいつの間にか、ドクンッと嫌な音に変わって……。
冷え切った私の手足は、小刻みに震え出していた。
……
…………。