夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

ドキンッと胸が弾む、夢のような時間。

物心がつく前に父が他界していた私にとって、男性におんぶをされるのは初めての経験だった。
幼い日に憧れた、事。


「じゃあ、行くよ?」

遠慮がちに膝裏に手を回しながら、彼は私を背負って立ち上がった。

色んな意味で、ちょっとくすぐったくて……。
でも、久し振りに幸せを感じる。


ゆっくりと砂浜を踏みしめる彼の歩みのテンポが心地良くて、広く暖かい背中が今までにない安心感をくれて……。

彼の背中に頰を寄せたままそっと目を閉じた私は、ついウトウトと眠りの世界に誘われてしまいそうだった。


今夜は新月。
その私の心のように真っ暗な世界の中で、お月様を見付けた。

白金色に輝く彼は、まさに私を照らして導く月光となるーー。
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