夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

?……なに?

目の前に差し出された手に首を傾げる。

再会を喜ぶ握手、な訳がない。
ただじっと見つめていると、彼が問い掛けてきた。


「お前が昨日俺に言った事。
あれは、お前からの依頼か?」

「!……え?」

「昨日、お前は砂浜で言ったよな?
『私がここから連れ去って、って言ったら……。貴方はどうする?』……てさ」

それは昨日、私が望んだ夢のようなお願い。
叶う事はないと分かりながら、口にしてしまった儚い願い。

の、筈だった。


「俺がお前を、次の契約者に選んでやる。
お前が本気で望むなら、その依頼引き受けてやるって言ってんだよ」

「っ……ヴァロン」

夢は終わらない。
夢は叶うのだと言いたげに、ヴァロンの言葉が、優しく私の心に沁みてくる。


私だけを見つめる、彼の眼差し。
私に差し出された、彼の大きな手。

嬉しくて。
今すぐ手を伸ばしたくて……。


ーーけど、同時に浮かぶ現実。

きっと、迷惑がかかる。
私のせいで、ヴァロンもみんなにもッ……。

震える手を、私は握り締めて俯いた。
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