夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

(4)


俺は基本的に我が儘だった。
仕事で我慢する事が多いせいか、その反動でプライベートではあまり我慢をしない。
夢の配達人の隠れ家の中や、特にジジイやシュウの前ではやりたい放題。
欲しいと思った物は何でも買うし、食べたいと思ったら満たされるまで食べる。


だから……。
俺にとって何でも我慢のアカリの生活が、堪らなく嫌だったんだろうな。

自由にしてやりたい。
何度、逃がしてやろうと思った事か……。


でも、アカリはそれを望まない。
我が儘放題の俺と違って、その場で必死にもがいて生きようとしていた。

その姿が痛くて、儚げで、切なくて……。
時々、驚く位美しく見えた。

面倒な事や嫌な事を事前に回避して生きて来た俺とは違って、自分に与えられた運命から目を逸らさず、向かって行くアカリ。

馬鹿だけど。
俺はそんなアカリだから、好きになった。
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