夢の言葉は魔法の呪文【改訂版】

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私が連れて来られたのは、昔読んだ絵本に描かれていたような……。海が見渡せる小高い場所に建った、美しい別荘。
白壁に、赤に近い茶色のオシャレな屋根の外観。
二階建てだけど、一階と二階の間や天井は高いから、別荘は縦にも横にも広く大きい。


立派な正面玄関の扉を潜って、建物内を使用人に案内されながら歩くだけで驚かされた。
自分の顔が映るくらいに美しく磨かれた床は、一歩踏み出す度に土足で歩くのが申し訳なくなる。


広く長い廊下の壁際には、見るからに高価そうな壺や彫刻品や絵画。
価値なんて全く分からないけど、キョロキョロと泳ぐ視線に映る物全てに、「すごい!」という感情が怖いくらいに溢れてきて足がすくむ。


階段って、こんなに登るのが大変だったっけ?
と思う程に驚かされる、一階から二階へ上がる階段の長さ。


与えられた部屋も、以前住んでいた家全体の広さがそのまま自室になったようで……。立派な調度品に飾られ、お風呂も洗面所も設置されていた。
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