俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
そう言われると嬉しさと切なさが入り交じって、胸が苦しくなった。

気に入られていたとしても、恋人になれるほどじゃないんだよなぁ……と考えを巡らせていると、彼女が思い出したように言う。


「そういえば、さっきボスがあたしに言ってきたの。『アリサは寂しがり屋だから、エイミーが職場での一番の理解者になってやってくれ』って」


エイミーは不思議そうにしていても、私にはなぜ彼がそんな助言をしたのかがわかった。

きっと、私がまたひとりで悩まないように、職場にも逃げ場を作ろうとしてくれたのだろう。それはつまり、もう雪成さんはそういう存在になってくれる意志がないことの表れでもある。

私は意味なくストローで氷をカラカラと遊ばせ、自嘲気味の笑みをこぼす。


「振るつもりだったってことだよね。私が落ち込むのもわかってて、エイミーにフォローさせようとしたんだよ。私のこと好きじゃないなら、そんな気は遣わなくていいのに……」


喉を通ったグレープフルーツジュースが、傷ついた胸に沁みるようでさらに痛く感じた。

目を伏せて小さくため息を吐き出すと、しばしなにかを考えていたエイミーの口から意外なひとことが飛び出す。
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