俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
それから、父が私たちのために用意していた特別なごちそうを出してくれて、舌鼓を打ちながらたらふくいただいた。

その最中、オードブルの中にあった、小さくカットされたサンドイッチを食べた瞬間のこと。

“あぁ、懐かしい味だ”と感じたのだ。雪成さんと初めて会った日にもらったサンドイッチを食べたときと同様に。実際、今日のそれはパンの種類も挟まれた具も同じだった。

実は昔、私もリオンに行ったことがあるという話を母から聞いている。もしかしたら、雪成さんはお父様と同じレシピでサンドイッチを作っていて、その味を私も覚えていたのかもしれない。

そう考えると、不思議で奇跡的な巡り合わせが起こっていたのだと思う他なく、ひとり感動してしまった。


さらに、父はケーキまで作っていて、皆で歌を歌って祝ってくれた。自分がこんなふうに祝ってもらえるとは思っていなかったので、恥ずかしさもありつつ感激で胸がいっぱいだ。

私の隣に座る雪成さんも、料理を運んでくる父と和やかに話していて、その様子を見ているだけでほっこりする。

ランチ営業を終えたあと、貸切状態の店内でケーキとコーヒーを食べているところに、父もやってきた。
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