にせもの王子さま
えっと・・・。
まわらない頭で考える。

早い話が、ハッキリと言葉にしていないけど・・・クビって事?

そんな! そんな事になったら、この間から「もういいトシなんだし・・・」とか訳わかんない事言って、やたらと結婚を進めてくる親に、これ幸いと田舎に連れ戻されちゃうじゃん!

「それは! それだけは嫌ですうぅぅ!」

叫びながら、社長の腰あたりにすがりつく。
近距離から私にタックルされた格好になった社長は一瞬よろめいたが、デスクに置いていた手で体を支え、すぐに体制を立て直す。

「ちょっと、離しなさいよ!」

力を込めて私を引き離そうとするが、私も引き下がれない。必死に腰にしがみつく。
しばらくそうしていたが、諦めた様子で呆れた顔をして、私を見下ろした。

「なら、アンタが役に立つ事を証明なさい」

顎に人差し指と中指をそえ、少し考えている社長。

何社も落ちて、やっとの思いでつかんだ社員の座。何より、あんな不便な田舎に帰りたくないし、今の生活を手離したくない!
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