異世界で、なんちゃって王宮ナースになりました。
「い、いひゃいんだが……」
眉をハの字にして、されるがままになっているシェイド様を軽く睨む。いろんな表情を見せてほしいと言ったのに、彼はさっそく作り笑いだ。
「痛くしているんですから、当然です。あなたは王子である前に人なんですから、どこかで弱音を吐いたり、気を抜く瞬間があっていいんです。でないと体を壊しますよ?」
説教じみた言い方になってしまったが、自分が二十代半ばの頃は自分のことで精一杯で誰かのためになんて考える余裕などなかった。
自分が先輩になり、後輩ができてから初めて誰かの手本でいなければならない緊張感や教える立場にいる責任感を自覚したものだが、シェイド様は私が抱えてきたものより遥かに大きさなプレッシャーと常に戦っているのだろう。だって、彼の手には国民の未来が委ねられているのだ。
「王子として、月光十字軍の皆を導いてきたあなたを尊敬しています。でも、完璧でないあなたを見たからといって幻滅したりなどしません」
後ろ向きだろうが、腹黒かろうが、どんなシェイド様でも受け止める。そんな気持ちで言ったのだが、シェイド様は目を丸くして微動だにしない。目の前で手を振ってみると、彼は頬を摘まんでいた私の手首を掴んで外させ、喉の奥でクッと笑った。
「くっ、くく……。あなたはどうしてこうもすんなりと、俺の心の中に入ってこれるのだろうか。繕った仮面も叩き割ってくる勢いだしな」
目を糸のように細めて破顔する彼に、私は目を見張る。おそらく、私が初めて見たシェイド様の素の表情だったからだ。こんなにも無邪気な表情ができる人だったのかと、驚く。
年齢よりも大人びて見えるのは王子として振る舞わなければならないからであって、目の前の彼が本当の姿なのかもしれない。
「わかった、あなたの前では自分を繕わないと誓おう。だから若菜も、俺の前ではありのままでいてくれ」
「約束します」
「ではさっそく、俺のことはシェイドと呼び捨てにしてくれ。それから、敬語も必要ない」
ありのままを見せてとは言ったが、彼はとんでもない要求をしてきた。できることなら叶えてあげたいのだが、彼の立場を悪くするようなことがあっては本末転倒だ。
シェイド様が息抜きできる時間が必要だと思っての提案だったのだが、積み上げてきたものを崩すような危険は冒せないと首を横に振る。
眉をハの字にして、されるがままになっているシェイド様を軽く睨む。いろんな表情を見せてほしいと言ったのに、彼はさっそく作り笑いだ。
「痛くしているんですから、当然です。あなたは王子である前に人なんですから、どこかで弱音を吐いたり、気を抜く瞬間があっていいんです。でないと体を壊しますよ?」
説教じみた言い方になってしまったが、自分が二十代半ばの頃は自分のことで精一杯で誰かのためになんて考える余裕などなかった。
自分が先輩になり、後輩ができてから初めて誰かの手本でいなければならない緊張感や教える立場にいる責任感を自覚したものだが、シェイド様は私が抱えてきたものより遥かに大きさなプレッシャーと常に戦っているのだろう。だって、彼の手には国民の未来が委ねられているのだ。
「王子として、月光十字軍の皆を導いてきたあなたを尊敬しています。でも、完璧でないあなたを見たからといって幻滅したりなどしません」
後ろ向きだろうが、腹黒かろうが、どんなシェイド様でも受け止める。そんな気持ちで言ったのだが、シェイド様は目を丸くして微動だにしない。目の前で手を振ってみると、彼は頬を摘まんでいた私の手首を掴んで外させ、喉の奥でクッと笑った。
「くっ、くく……。あなたはどうしてこうもすんなりと、俺の心の中に入ってこれるのだろうか。繕った仮面も叩き割ってくる勢いだしな」
目を糸のように細めて破顔する彼に、私は目を見張る。おそらく、私が初めて見たシェイド様の素の表情だったからだ。こんなにも無邪気な表情ができる人だったのかと、驚く。
年齢よりも大人びて見えるのは王子として振る舞わなければならないからであって、目の前の彼が本当の姿なのかもしれない。
「わかった、あなたの前では自分を繕わないと誓おう。だから若菜も、俺の前ではありのままでいてくれ」
「約束します」
「ではさっそく、俺のことはシェイドと呼び捨てにしてくれ。それから、敬語も必要ない」
ありのままを見せてとは言ったが、彼はとんでもない要求をしてきた。できることなら叶えてあげたいのだが、彼の立場を悪くするようなことがあっては本末転倒だ。
シェイド様が息抜きできる時間が必要だと思っての提案だったのだが、積み上げてきたものを崩すような危険は冒せないと首を横に振る。