憧れの彼と、イイ仲になりたいんです!
その笑顔を見てた私は、胸がいっぱいになってしまい、気づくと目の中には沢山の涙が潤んでる。

それらが瞼に溜まりきれずに溢れ出して、鼻筋や頬を濡らしだした。




(私……)


私も坂巻さんが好きだ。

単なる憧れだけじゃなくて、もうずっと前からきっと、彼のことを好きになってたんだと思う。


ただ、それを認めるのが怖かった。

過去のトラウマが気持ちを邪魔して、あの時と同じ様な恥をかかないで済むよう、わざと考えないでおいた。


……だけど、本当はいつも彼みたいに素敵な人が側に居てくれたら…と心の何処かで願ってた。

私を誉めてくれて癒してくれて、古い傷も全部受け止めて浄化してくれて。

こんな風に優しく笑いかけてくれて。

「杏…」と優しい声で呼んでくれたなら…とずっと夢見てたんだ。


此処で今彼にたった一言、「好き」と言ってしまえば、その夢は成就するのかもしれない。

でも、私の声は泣き声にしかならず……。



「諸住さん…?」


慌てた彼が私の涙を手で拭いだす。

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