憧れの彼と、イイ仲になりたいんです!
素顔の自分を好きになって…
「ちょっと来てくれ」


俺が内線で小山課長に呼び出されたのは、午前十時半を少し回った頃だ。

クリスマス用の商品サンプルが届いたとかで、売れ筋になりそうなもの確認して欲しいと頼まれた。


上のフロアにある会議室へ向かうと、一課の連中も呼ばれていて、俺達は互いに挨拶をし合い、サンプルを持ってきたメーカーとの話し合いに入った。


輸入されてきたサンプルを手に取りながら売れ筋になりそうな商品を見定め、残りはまた午後に…と言って解散したのは、昼食休憩に入る五分ほど前だ。



「坂巻、ちょっといいか」


一服しようと外を指差され、俺は小山課長と二人で非常階段へと向かった。

真夏の眩しい光の中で、暑い…とワイシャツの首元を緩めながらタバコを吹かしていると……。


「俺なぁ、昨夜面白いもんを見たんだよ」


急にそう言って小山課長がニヤつく。


「何すか」


気色悪そうにその顔を見遣り、締まってねぇな、と内心で呆れた。


「昨日、家族にせがまれて花火を観に行ったんだよな。そしたら、そこで見慣れない二人組を見つけてさ」


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