憧れの彼と、イイ仲になりたいんです!
ニヤニヤしながら言い返し、こっちは思わず「え?」と訊き直した。


「いやまあ、相手が可愛かったから相手の男がニヤつくのも分からないではなかったんだがな」


横目を流され、俺は背中に冷や汗をかいた。


「……まさか、それって」


俺達?と全部を訊き終わらなうちに。


「可愛かったなあ。椿柄の浴衣を着た諸住さん」


タバコの火を揉み消すと小山課長は俺に向かい合い、ニヤニヤしながら「デートは上手くいったのか?」と訊ねてくる。


「知らなかったよ。君達が付き合ってるの」


まあ社内恋愛はご法度じゃないから別にいいけど…と笑う相手に、俺はドギマギしながら答えた。


「別に付き合ってませんよ。それに、まだその返事も貰えてない段階です」


実は昨日初めて二人で出掛けたと白状すると、課長は驚いたように目を見張り。


「へぇー、二課のスターでも本命には慎重なんだ」


意外だなぁ…と笑い飛ばされ、俺は(ほっとけよ…)と思って煙を吐いた。

そのまま視線を空に向けながら、昨夜の話を思い出した。
彼女のトラウマを思うと顔が固まり、それに気づいたらしい課長が……


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