手をつなごう
「さぁ~行こう。」

さっさと戸締まりするオレの後を、慌ててついてくる。

「せっかくだから、コンビニは止めて……
もう少し先のスーパーで、夕ごはんの材料も買って来よう。」

夏バテのせいか、ちょっと痩せた彩ちゃんに栄養を与えたくて

久しぶりの二人ご飯を買いに行くことにした。

「洋ちゃん、何が食べたい?」

別に食べたいものはなかったけど…あえて

「ガッツリ肉が食べたいかな?
カツって……めんどくさい??」って聞いてみた。

「ううん、大丈夫だよ。
だったら、脂身を押さえて……ヒレカツにするね!
キャベツを沢山切るから、一緒にいっぱい食べてね。」

アイスは、ソフトクリームに替わって……舐めながら、のんびり帰った。

ドアの前には、不服そうな顔をした人物が……こちらを睨んでる。

「洋ちゃん、おっそいよ!!
暑いんだから、お客さん待たせたらダメだろう。」と

スーツを着た珍しい悠が、イライラ文句を言っていた。

「ワルい、ワルい。
彩ちゃんとアイスを買いに行ってたから。」

苦笑いのオレの横で

「…………カッコイイ………。」と小さな独り言を呟く彩ちゃん。

悠がネクタイを緩めたのが、気に入ったみたいだ。

可愛い~ねぇ。

クーラーの利いた店に入ると

「彩先生、ごめん。何か飲み物ちょうだい。」って……

おいおい、ここはオレの店で

彩ちゃんは、バイトじゃないんだぞ!

オレの心の声は聞こえることもなく、彩ちゃんはイソイソと

悠に冷たいアイスコーヒーを出していた。

まぁ、彩ちゃんが嬉しそうだからいいかぁ~。
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