手をつなごう
あれから1週間…………何の話しもないまま時間が過ぎ

オレも忘れかけていた。

ここのところ、幼稚園関係の人間は………誰一人パンを買いに来るどころか

商店街で見かけることはなくなった。

今年も、クリスマスのイルミネーションが点灯し始め

店の窓も、去年彩ちゃんが作ってくれたリースを飾り………それらしくした。

クリスマスのプレゼントは、くじとラッピングを手伝う妹が来ないから

今年は、止めかなぁ~と思いながらブラついて………公園まで差し掛かった時

久しぶりの彩ちゃんが………一人ベンチに腰かけていた。

『オッ、彩ちゃん見っけ!!』

この寒いのに………マフラーも手袋もしないで…………何やってんだ??

不思議に思いながらも、ウキウキして近づいてみると………

肩を震わせて、空を見上げていた。

「あや…………」と言いかけた声は……………

悲しげな後ろ姿に………………開きかけた口を告ぐんだ。

何があったのかは…………分からない。

けど………何故泣いているのかは………分かった。

多分、自分の心の嘘に気づいたんだろう。

本当は悠を…………好きなのだと。

あいにく、約束した海晴ちゃんは……居なかったけど……

オレは………

偶然にも、側にいることができた。

後ろから………ソッと近づいて………頭を撫でてやる。

自分に正直になれたごほうびに…………。

「洋ちゃん……………」

それっきり言葉を発する事はなく……

ただ静かに………泣き続けた。

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