恋のコーチは期間限定
 コートの脇で応援……していたか分からないけど蒼のところに歩み寄っても顔が見られない。

「あの……ごめん。」

「何がです?カッコ良かったですよ?」

 微笑んでくれて余計に居た堪れない。
 しかも敬語だし。

「もっと真剣な感じかと……。」

「まぁ会社のレクリエーションならこんな感じでしょう。
 最初の希望通りに無様な姿は見せずに済みましたよ?」

 そうか……。そうだった。

 つい負けず嫌いが出て、大きな大会で勝ち進むくらいの気持ちになっていただけで、実際は無様な姿を見せたくないからが始まりだった。

 なんだかおかしくなって笑う。

「やっぱりコーチがいいお陰ね。」

「それはもちろんです。」

 したり顔の蒼にフフッと笑うと気持ちが楽になった。
 色んなことを気負ってたなぁ。
 蒼の隣で笑って、なんだか肩の荷が下りた気がした。









< 183 / 253 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop