恋のコーチは期間限定
「打ち方がソフトテニス独特のパワフルさがあるから。」

 そうなのだ。

 同じテニスと侮っていた。
 どうやらソフトテニスと硬式テニスは似て非なるものだったらしい。

「そうなのよね。
 クセがついちゃってて。
 サーブはまだいいんだけど……。」

「打つとホームラン。」

「そうなの!もう嫌になっちゃう。」

 力加減を弁えればどうにかなる。

 けれどコントロール重視にしようとするとどうしてもイライラが募って思いっ切り振り抜くとホームラン。

「ハハハッ。フルスイングは見てて気持ちいいんですけどね。
 グリップを変えた方がいいですよ。」

 あらあら。
 笑うと可愛らしい感じになるのね。
 しかも敬語。

 受け答えで好印象になって無謀なお願いをしていた。

「どうせなら教えてくれない?
 誰もコーチ役が捕まらなくて困ってるの。」

「コーチ役……ですか。」

「えぇ。何かお礼もするわ。」

 考えている様子の彼に無理難題を押し付けちゃったかしらと反省した。
 望美がサークルでお願いしてみてくれても誰も捕まらなかったんだ。

 やっぱりいくらなんでも若そうなこの人もおばさん……とまでは言われなかったけど年上に教えるなんて嫌よね。






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