恋のコーチは期間限定
 次は私と向かい合ったままラケットのグリップ位置の角度を見てくれた。

「このぐらいで握るとイースタングリップで初心者向け。
 もう少し角度をつけたこれがセミウエスタングリップ。
 この握り方だとパワーが出やすい。」

 ガットが見えないように真っ直ぐ持っていたラケットを少しずつ倒していく。
 その絶妙な角度の違いでそれぞれ名前がついているとは恐れ入った。

 彼の講義は続く。

「次がウエスタングリップ。
 美希さんがソフトテニスで使っていたグリップ。
 これが一番パワーが出る。」

「握る角度で違ってくるなんて知らなかったわ。」

 名前もパワーまでも違うなんて。

「慣れれば試合をしながらグリップを変えて打ったりもします。
 ソフトテニスはボールが柔らかい分、パワフルに打つ。
 そのパワフルさはコントロール出来るまでは忘れた方がいい。」

「だからこの持ち方?」

 私は持ち方の角度を変えてガットが見えないように真っ直ぐにした。
 いつもより重いラケットに自然と片方の手も添える。






< 75 / 253 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop