【完】武藤くんって甘くない
「そこ、目標なの?もっと話したいんだろ」


「そうだけど…」


「だったらさ、なんか食いながら話そ。駅前に新しい店できたの知ってる?」


「うん」


「ほらほら見てる。この調子で、ゆずちゃんのこと意識させよう」


「武藤くんこっち見てないよ。最近コンタクトしてないから遠くは見えないって言ってた」


確かに武藤くんの顔はこちらに向いてるんだけどね、完全にボヤけてるはず。


「そーなの?あいつ目ぇ悪いのか。ちぇ」


壁ドンしていた小松くんはアッサリあたしから離れた。


駅前のお店に移動して、また小松くんに奢ることに。


武藤くんのことで協力してもらってるし奢ってと言われたら断れない。


「俺ね今バイト探し中なの。見つかったらゆずちゃんに奢るからね」


「あ…うん、ありがとう」


小松くんはおいしそうに苺パフェを食べている。


武藤くんと同じ甘党なんだね…。


これが武藤くんと過ごす放課後なら、どれだけ嬉しいか。


学校帰りのデート。


いつ叶うかな…。


「そうそう、聞きたかったんだけどさ」


食べかけのスプーンを手に、あたしの目の前で小松くんがそれをグルグルと回す。


「え、なに?」


「ちょっとした催眠術。俺のこと好きになーれって。かかった?」


「ええっ?ならないってば!」


「まじかー。ゆずちゃんと俺、今デートしてるっぽくね?ちょっとドキドキするよね」


「そうなるのかな。全然ときめかない…」


「ひどっ。俺だってそれなりにモテるのに」


そうだと思う、優しいしイケメンだし…けどあたしが好きなのは武藤くんだから。


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