すべては、
もう少し待ってそれでも帰ってこなかったら、電話しよう。けい…

そう思って落ち着きなくしていた時、スマホの着信音が静かな部屋に鳴り響いた。


画面には『西部さん』と出ていた。


「もしもし…」


『実里さん?西部です。』


「どうしたんですか?」


『緊急の用件で係長にお聞きしたいことがあるんですけど、全然連絡着かなくて…家に帰ってますか?』


「それが、まだ…」



その時、固定電話の着信を伝える音楽が鳴り出した。


和也さんかも!


『西部さんごめんなさい。また直ぐ連絡します。』


私は失礼を承知で相手の返事も聞かず通話を切ると、固定電話の受話器を取った。


「もしもし!」























「西部さん、ごめんなさい。着いてきてもらってしまって…それに私の変わりに…」



無機質な廊下の固いソファに座り、うなだれる私の手を隣に座る西部さんが優しく握ってくれる。



「気にしないで。私から言ったんだから。
長い時間海水の中にいたから…野中さんの変わってしまった顔を実里さんが見るのは…辛いでしょ。」



「やっぱり、和也さんだったんですね…」



「ええ…」



あの和也さんが…信じられない…



「警察は酔って海に落ちたんだろうって…」




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