すべては、
すべては
目が覚めるとベッドの上だった。


始めに自分の家ではない見慣れない天井が目に入ってきた。


「ここは…」



どうしてこんなところにいるのか記憶を辿れば、木下さんにハンカチで口を塞がれたところまでは覚えている。


あの時、薬品みたいな変な臭いがして…

気を失って…

それからここに連れて来られたんだろう。



ここはどこか把握するために腰を起こしたところで、その異変に気付いた。


「服…」


さっきまで着ていた服はなく、下着姿になっていた。


あの人に服を脱がされたと思うと吐き気が込み上げてくる。


そして、結婚指輪は外され、首にベルトのような物が巻かれていた。


継ぎ目らしき所も見つけられず、引っ張っても取れることはない。


「何なのこれ…」


これが何か気になるが、まずはここがどこか把握しないと。


見渡せば、そこは裸電球が一つだけ吊るされ、コンクリート壁に囲まれた薄暗い狭い部屋で、ベッド以外は何もなかった。


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