すべては、
その中を歩いていくと、素足に砂粒が食い込んでくる。


「痛っ…」


だけど、こんなこと気にしてる場合じゃない。
あの人に見つかる前に逃げなくちゃ。


あれ?奥にあるの壁かと思ってたけど…もしかしてシャッター?

どうにかしてあそこから出られないかな…


見えた一つの希望に走りだそうとした時だった。


「だめじゃないですか。勝手にいなくなるなんて。」


直ぐ後ろで声がした。


怖くて振り返れず、彼を見ることが出来なかったが、きっと1mも離れてはいないだろう。


「心配しましたよ。」


ゴクリと自分の喉を鳴らす音がやたら大きく聞こえた。

冷や汗が背中を伝っていき、絶望が押し寄せる。


「僕の愛しい人。」

「!」


暗闇から手が延び、私の固まった体を後ろから抱きしめた。

耳元で呟かれる声に背筋が凍る。



「僕から逃げるなんて悪い子ですね。」



首へと絡み付いてきた長い指が撫で上げられる。


「どこへ逃げても無駄ですよ。この首輪が貴女の場所を教えてくれます。」


これ、発信器だったの…


長い指が首の端まで掛かると、息苦しさから呼吸が早くなっていく。


「さあ、悪い子にはお仕置きをしなければ。」


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