腹黒上司が実は激甘だった件について。
「さて、秋山。先に風呂入れよ」
「先になんて使えませんよ」
「遠慮とかしなくていい。俺はまだやることがあるから」

そう言って、坪内さんはノートパソコンを開いた。
残業して、更に家でも仕事するつもりなのだろうか。
ぐずぐずしていると、坪内さんはいたずらっぽく笑いながら言う。

「入らないんだったら俺が入れてやろうか?」
「あり得ないです」

ピシャリとお断りし、先にお風呂をもらうことにした。
坪内さんは私に使い方を一通り教えると、さっさとリビングへ戻っていく。

他人の家のお風呂を使うだけでもドキドキするのに、自分とは違うボディーソープ、シャンプーの香りに更にドキドキする。
坪内さんが普段使っているものを私も使うんだと思ったら、なんだか恥ずかしくなってしまった。

待たせてしまっているのが申し訳なくて、ささっとシャワーを浴び、髪も乾かさずに出た。

「お先でした」

リビングで坪内さんに声を掛けると、「早っ」と突っ込まれた。
おもむろに私へ近づいてくると、髪を一掬いする。

「髪、濡れてる」
「い、いいんですよ。さ、早くお風呂に入ってきてください」
「お前、俺に遠慮して早く出てきたんだろ?」
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