腹黒上司が実は激甘だった件について。
奈穂子がニヤニヤして、

「日菜子と王子様に乾杯!」

と上機嫌だ。

待て待て、何を勘違いしているの。
ちょっとお世話になっただけだよ。
私はいたって冷静に否定する。

「でも、王子様に好きって言われたんでしょ。」
「言われたけど、期待には応えられないって答えた。」

私の言葉に奈穂子は持っていたジョッキをドンと音を立ててテーブルに置く。
そして眉間にしわを寄せた。
そして低く冷たい声で言う。

「バカなの?」

うん、バカだと思う。
自分でもどうしたらいいかわからないんだよ。
自分の気持ちがわからない。
めっちゃ困ってる。

「坪内さん、すごい心をこじ開けてくるの。こじ開けるくせに土足で上がるわけじゃなくて、靴脱いで上がってくる感じ。」
「すごい表現ぶっこんできたわね。」

奈穂子が呆れたように息を吐き出す。

「ねえ、どうしたらいい?」

自分の気持ちを整理できなくて、奈穂子に助けを求めた。
奈穂子はエビマヨを頬張りながら、うーん、と考える。
いや、ただエビマヨを食べてるだけかもしれない。
このエビ大きいから口いっぱいになってしゃべれないし。
めっちゃモグモグしてるし。
< 44 / 89 >

この作品をシェア

pagetop