腹黒上司が実は激甘だった件について。
ふいに坪内さんが眉間にシワを寄せる。

「熱のせいか?」
「何がですか?」

尋ねる私に、坪内さんは手を口元にあて考えるようにしてから、「俺のこと惚れ直しただろ?」と言った。

「はっ?何言ってるんですか!」

私の言葉に、「おいおい、無意識かよ」と、坪内さんはお腹をかかえて笑いだした。

どういうこと?
私、何か言ったっけ?

意味がわからなくてムスっとする私に、「元気になってよかったな」と、また王子様スマイルが降ってきた。

夜には体調もすっかりよくなって、「夕飯何にします?」と言う私に、坪内さんは不思議そうな顔をする。

「さっき昼飯食べたのに、夕飯食えるの?」
「食い気だけが自慢の秋山ですが何か?」
「いや、元気でなによりだ。今日は俺が作るよ」
「いえいえ、看病してもらったお礼に私が作ります」

私の言葉に、坪内さんは大きなため息をついた。

「バカ、ちゃんと休めよ。それにな、一緒に暮らしてるんだから貸し借りはなしだ。持ちつ持たれつって言葉知ってるか?」

坪内さんも、奈穂子と同じことを言う。
急に胸が締め付けられる思いがした。

私は大人しくソファーに座る。
それを見て坪内さんは満足そうな顔をしてから、冷蔵庫を漁り始めた。
その後ろ姿に、私はぼそぼそと話しかける。

「一緒に休んでくださってありがとうございました。きっと明日は仕事山積みですよね。ごめんなさい」

「できる秋山が補佐だから大丈夫だろ?」

坪内さんは背中越しにそう言うと、からからと笑い飛ばした。
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