さようなら
「神崎さん。いまどこですか?」

二宮さんからの電話だ。

「えぇっと。あの、そのー。」

「もしかして、迷っちゃいました?」

「すみません。お恥ずかしながら。」

「いえ、中国からきたんでしたよね。無理もないですよ。近くにどんな店がありますか?」

「えーーっと…」、

わざと、ゆっくりと近くの店の名前を言う。

「じゃあ、近くに青い看板の店があるでしょ。そこまでいってください。」

「ふぁーい。……‥…‥着きました。」

「はい。後ろを振り向いてください。」

振り向くと、駅から笑顔で手を振っている二宮さんが見えた。


「すみません。迷ってしまって。」

「いえいえ。ところで神崎さん、世界一安くて美味しい店いきたいと思いません?」

「ほぉーー。行ってみたいです‼」

「じゃあ、行きましょう」









「おじちゃーーん。いつもので!」
「へーい」


「二宮さんここは?」

「屋台って知りません?ここのおでんめちゃくちゃ美味しいんですよ✨」

心なしかテンションが上がってる気がするな。

「や、…‥たい…‥ですか。」
「まあ、とりあえずは楽しんでください。」

はい、お酒と渡された酒を貰うとじっとメニューをみる二宮さん。
俺がちょっと薬を酒に入れても気づかなそうだし…‥




「神崎さんーー。何がいいですか?」
もう酒が回って来ているのか…‥…‥…‥

一緒にメニューを覗きこむ。
頸動脈まであと2センチ。さすがにここまで無防備だと心配なる。

俺も少し酒が回ってきて…‥

やっぱり二宮さんといるのが一番心地よくて、可愛くて…‥…‥なんて考えていたとき後ろに気配を感じた。


わかってる。俺をいらないと判断すればすぐに切り捨てるんだろう。監視されていることも十条承知の上だ。



グラスを回す。グラスの酒がグラリと、揺れると俺も秋からAkiへと戻っていく。

大丈夫。俺は仕事をこなすだけだ。
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