硝子の花片
けほけほっごほっ

私は激しい咳の音で目を覚ました。

「総司…!」

その激しい席と共に揺れる背中は、前よりももっと寂しそうで。

「…っ…おはようございます…目覚めてよかった…」

浅い呼吸を繰り返し、苦しそうにしながらも笑顔を作り、心配してくれるのが彼である。

「おはようございます、じゃないですよ!今白湯をお持ちしますね」

そう言って立とうとした私の浴衣の裾をぎゅっと掴まれる。

「…」

何も言わないその人は、怖いのだろうか。


親しい人を、失う事が。




平助くんが葬られて早1週間が経つ。

あの事件は後に油小路の変と呼ばれ、新選組の隊士の心に深く傷を付ける出来事となった。





「…これが、私達の運命…」

そう呟いた総司のさらに青白くなった肌が、その運命を暗示しているようで、胸がぎゅっと痛んだ。



こんな、運命なんて。

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