借金取りに捕らわれて〈番外編〉~日常~
そうは思うものの、自分の意思ではどうにも出来ない。

だから早くキスを止めてほしいと思うのに、どうしたことか止めてほしくないとも思う…



「とっても美味しいお酒だ。」


「/////」


「もっと味わいたい。」



チュッと軽くキスをされ、続きを促される。

抱きつきたい衝動もふつふつと沸き上がってきて、このままじゃ歯止めが効かなくなるのは目に見えている。

でも、好きなだけ抱きつける体を前にして、誘惑に打ち勝つのは難しい…



ああもう、身を委ねよう…
このままどこまでも秋庭さんに…







『ピンポーン』







部屋に響いた音で、その誘う唇と体に吸い寄せられていた私の体が止まる。

そして、チャイムを聞いた秋庭さんは何故か、溜め息を吐きたそうな顔をしていた。



『ピンポーン』



「ヒロ?いるんでしょ?この前の旅行の写真持ってきたよー?ヒロー?」


聞きなれた声の来訪者が、今度はドンドンと玄関のドアを叩き出す。


「………ヒロ、外は気にするな。」


私は秋庭さんがそれを言い終わる前に、膝から飛び退いていて、玄関のドアを開けていた。



「真希ー!」


そして真希に存分に抱きついた。


ああ、いいわー


「ヒロ、芋焼酎飲んだ?」


「うん、飲んだ。」


玄関に足を踏み入れた真希の視線が、そこに置いてある男性用の靴に止まった。
それから部屋の中にいる秋庭さんに視線を移し、最後に芋焼酎の瓶で止まる。



「あら?良いもの飲んでるじゃない。私も混ぜてもらっても、構わないわよね?」



真希はどこか怒っているような声で、私ではなく何故か秋庭さんにだけ聞いた。

きっと、私ならOKなのを分かってるからだろう。

それから、イスに座った酒豪の真希はあっという間に芋焼酎の瓶を空にし、私は酔いが覚めるまで、真希に引っ付いて隣から離れることはなかった。










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