はちみつドロップス

椎菜の一言で天の表情がみるみるうちに曇っていく。



思い出すチーズケーキの味は幸せなキスの余韻から……嫌味な椎菜の笑顔一色に変わっていく。



「椎菜チーズケーキ大好きだから……大好きな高原先輩と作りたいんですっ」



こう言って皇楽の腕に飛び付く椎菜を、自分は何度見て見ぬふりすれば良いんだろうか。



「あっ……天?」


「ごめん絵那ー。ちょっとトイレ行ってくるよっ」



あくまでも浮かべているのはいつも通りのヘラッとした笑顔。

心配そうに自分を見つめる絵那に手を振り、天はそそくさと教室を出て行ってしまった。



「…………」



せっかく仲直りしたのにまたこんなにもあっさりと崩れそうになっている。



「とにかく、今日は無理だ」


「えーっ」


立ち上がり、椎菜を腕から振り解いた皇楽が教室から駆け出す。



それをぽかんと見つめていた絵那の視界から、さっきまで隣に居たはずの慶斗までが教室の外に消えていってしまった。



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