はちみつドロップス

ずり落ちたカバンを肩にかけ直し、



「そんな卑怯なことしないしっ! それに朗楽くんのお迎えなら仕方ないでしょ」



いつものと変わらない調子で天が返す。



それをじっと見つめ、



「……荷物持って来てくれたのも、おまえか?」



皇楽は本題を切り出した。



窺うようにじっと視線を向ける皇楽に、



「荷物? 何のこと?」



知らない、と首を振って天は否定してみせる。



皇楽もそれ以上は追求せず、



「……ふーん。まぁ、いいや。とにかくありがとな」


「うんっ」



天に小さく笑いかけ、素直に礼を述べた。



皇楽に言われたありがとう。



それをにっとした笑顔で受け止めた天の頬が少しだけ赤い。



横をすれ違っていく皇楽にバレないように幸せを噛み締める傍らで、



「朗楽がケーキ喜んでた」


「良かった……って、あっ!!」



すれ違い様に囁かれたセリフに思わず大きく反応してしまう。



マヌケ面で立ち去る背中を見つめる天に、一瞬だけ振り返った皇楽の笑顔が柔らかかった。


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