はちみつドロップス

去って行く背中を映していた天の瞳が大きく揺れる。



両脇に下ろされていた手をぎゅっと握り締める。



バラさなかった。

そんなんじゃない……。




最近緩みっぱなしの天の瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。



皇楽の荷物を届けに保育園に行った時。


窓の隙間から見えた朗楽を抱きしめる皇楽の顔は天の中に焼き付いた。



……朗楽くんを迎えに行ったときの高原、すごく優しい顔してた。

だからバラせなかったんだ……。



皇楽が完全体の主婦でもきっと嫌がる女の子なんて居ないと、朗楽を抱きしめる姿を見た天は思っていた。



それに弟妹の為に主婦してる皇楽は温かい。



それを絵那が知ればきっとそう思うに違いない。



だから天は言えなかった。



自分の狡い心に涙の溢れてくる瞳を両手で覆った。



皇楽のあの顔を知ってるのは、自分だけでありたいと思ってしまったから。



「ごめん。だって……好きなんだもんっ」





嗚咽混じりに吐き出した感情を、天はそっと胸の中へしまい込んだ。


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