暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】


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「……………つまり、再びこの様に注目を集めてしまったら、あなたの側妻様はもちろん、あなたまでもが危険に晒されると言う事」

…………………酷い。


この話をさっきから黙って聞いていたが、やる事がめちゃくちゃだ。

スフィア様はあれを誕生日プレゼントだと嬉しそうに語ってくれた。

普通何でもない侍女に嘘をつく必要があるだろうか。………………いや、ないだろう。

気遣う必要も争う必要もないのだから。

あれはスフィア様の本心だ。


「どうにかしてやりたいけど、上の側妻様が絡んでくるとなると力を持たない私達はどうする事もできない。スフィア様は王子様の側妻だから公になるような被害はないと思うけれど、侍女のあなたはそうとは限らない。今のうちにここから出た方が………」

心配するようなギャビンさんの声が聞こえてくる中、私はある事を考えていた。

出会ってまだ間もないけれど、私には逃げるという選択肢はない…と。

それに、

「…私、決めました」

ほっとけない原因。

それはやはり同じ歳の弟を持っているからなのだろうと思う。

それに、これが弟であれ、違うであれ、危険に晒されそうな人を見てみぬふりは私には出来ない。

だから…………



「スフィア様のお側で支え、例え私一人でも守り抜きます」

私は無力だけどこの幼い側妻様に何かしてあげたい。力になってあげたい。

「…………あ、あなた正気なの!?」

「はい。もう決めましたから。それに、私はこれでも結構場数を踏んでいるので」

毒殺されかけたし、他国の王女には気に食わないとビンタされたし、自ら人身売買の現場に潜入したでしょ?

それでもこうして未だに生きているんだし、何とかなるでしょう!


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