暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】


数分すると……。

――――コンコンコン。

ドアをノックする音が聞こえたと思ったら、直ぐさま声が外から聞こえてきた。

「失礼致します。ご用意できましたので今から王様の元へご案内致します」

「分かった。では、お願いしよう」

声をかけた侍女の後ろをついて行くと明らかに周りと違う異彩を放つドアに辿り着いた。

「こちらの中で王様がお待ちでございます」

軽く一礼してその侍女はどこかへ行ってしまった。



―――――コンコンコン。

「失礼致します」

先にドアを開けたのは宰相のファンで、そこから陛下が先に中へ入り、クレハにシュライク。最後にドアを押さえていたファンと後が続く。


黒いマントに身を包んだ陛下は変わらぬ威厳を漂わせ、他国の王前であろうとも堂々としている。

細長い赤色の絨毯の上を進んだ先に黒髭を生やした王が、階段の上にある王座からこちらを見下ろしていた。

「予定より大分早い訪問失礼致す。余はアンディード帝国の皇帝、リード・フォン・ドミリア・スミス・アンディードと申す。この度は賛同頂き感謝する」

「アンディード皇帝陛下。わざわざこのような遠い地にお越し頂き、こちらこそ感謝する。吾はガルゴ王国の第63代目王のオリバー・プルートス・イル・ガ・チェトス・リニア・ガルゴと申す。客室の準備はまだしっかりと出来ておらず、代わりに他の部屋を使用してもらう事になると思うが、滞在する間はそちらの住みやすいようおもてなしをするつもりだ。何か不便な事があればこちらの男に話すがよい」

そう言って隣にいる男へ視線を向ける。そこに立っていたのは先ほど迎え客間まで案内してくれた宰相のルトルスキーであった。

「改めまして自己紹介致します。私(わたくし)はガルゴ王の補佐をしております宰相のマッソン・ガルディーニ・ルトルスキーと申します。何なりと申し付けくださいませ」

にこやかに笑うルトルスキーはそう言って軽くお辞儀をする。

「……ではこちらも自己紹介せねばなるまいな」

そう言葉を発すると頭の回転が早いファンは一番に自己紹介を始めた。

「私(わたくし)は宰相のファン・ギルド・アイルヴェー・ロンザードと申します。後ろにおりますのは護衛の者でございます。こう見えましても実力は相当でございますので、警備の方は問題ないかと存じます」

さらりと武力の強さを伝えるファンにこの男はくえないと感じた王は、

「……ほぅ。それは安心じゃ。実は見ての通り慌ただしくしており警備の方が手薄なのを気にしておったのだ」

対抗するのを止め、含み笑いをしつつそう言葉を返した。

下手に対抗したら上げ足を取られかねない。

そう思ったのだ。

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