黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
薄っすらと目を開けると、そこは見たこともない部屋だった。

いや、部屋……とは言っても、普通の部屋ではなかった。


「何、ここ……?」


まず私の目に入ったのは、天井から吊るされた大きなシャンデリアと一面に描かれている天井画。

そして私が寝かされていたのはフカフカのベッド……それは金や銀のようなもので豪華な錦織柄に飾られていたのだ。

高校にいた時、世界史の教科書で似たような部屋の写真を見たことがある。

これはまるで、中世ヨーロッパの王妃の部屋……。


「私、一体……どこにいるの?」


訳が分からないながらも身体に力を入れ、そのベッドから起き上がった時だった。


「うららプリンセス様。やっと、お目覚めになりましたね」


ベッドの脇から、若い娘の声がした。

その声に目を向けると、黒に斑模様……黒豹模様のメイド服を着た、私と同じくらいの年齢の女の子が、ホッとした目を私に送っていた。


「あなた、誰? ここは……どこなの?」


メイドのコスプレにしてはちょっとおかしい柄の服のその娘に尋ねた。

すると、その娘は悲しげに眉を歪めた。


「まぁ……うららプリンセス。レオパードプリンスのおっしゃっていた通り……何もかもをお忘れなのですね」
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