黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
サーバルは天使のように優しく、私に語りかけてくれた。


「昔っから、体も弱くて頼りない僕を守ってくれて、とっても優しくて、温かくて。従姉だけれどまるで本当のお姉さんみたいで、いっつも僕が頼っていたね」


彼の顔からは悲壮な面持ちはなくなり、私を見て微笑んでくれている顔がとっても可愛くて……健が浮かべる純粋な笑顔に見えて。

その笑顔は私の心をじんわりと温めてくれて、とても幸せな気持ちになった。




だけれど……その幸せな一時は、アルビンの家臣の慌ただしい一声に掻き消された。


「サーバルプリンス! ウルフのナエイハと名乗る者の率いる軍が、物凄い勢いで城の敷地内へ侵攻してきています!」


私達は途端に現実に引き戻された。


「そうだ。レオパード……私達、行って戦わなきゃ」


私は大急ぎでレオパードの手を引いた。


「サーバル、いいこと? あなたは戦えるような状態じゃないんだから、本当に何も考えないで。ここでゆっくり休んでおくのよ」


私はそうサーバルに念を押して、城の敷地境界……ウルフの四天王、ナエイハが攻め込んでいる場所へ向かったのだった。
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