黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
レオパードはそんな私を見て目を細めた。


「やっぱり。あなたは転生されても、うららプリンセスなのですね」

「えっ?」

「転生される前……ここで一緒に暮らしていた時のあなたも、やはり元気で。用意された御食事をペロリと食べていましたよ」

「なっ……別にいつも、こんなんじゃないわよ。今はたまたま、お腹が空いていただけで」


無邪気な顔で言うレオパードに私はついムキになって、顔を火照らせてしまった。


「それより……私をあのホテルに返してくれる? あの、なんだっけ? 『異世界境界』とかいう、変なホテルに」


状況が状況だけに、私はこいつが客だったということなんか忘れて喋った。

すると、レオパードはまたも悲しげな顔をした。


「残念ながら、それはできません。あなたは転生されたとはいえ、ここ……パンターのプリンセス。私の王妃としてここで一緒に暮らしてゆくのです」

「はぁ? もうホント、訳が分からない。パンター? プリンセス? 王妃? 何なのよ、それ? そんなの、本当に私とは何の関係もないわよ!」


話が通じない苛立ちについに私は爆発して、ドレス姿のままダイニングルームを飛び出した。


(ここはどこ? 一体、私はどこに連れて来られたの?)


私はひたすらに混乱しながら、その大きな建物の中を見回した。
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