黒豹プリンスと傷だらけのプリンセス
プリンセス部屋の椅子にかけてオルビの出したフルーツティーを啜ると、漸く少し気分が落ち着いた。

しかし……


「私が……殺したの?」


私は恐る恐る口を開き、レオパードに尋ねた。


「私が、あいつ……フェニックを……」


すると彼は、穏やかな声で優しく話す。


「そんなこと……今は、気にしなくてもいい。今は、体を休めることだけ考えなさい」

「でも……」


今でも明確に思い出せる。

さっきまで見ていた『夢』……いや、あれは夢なんてものではない。

私が実際に行ったことの『記憶』……。



私の目から涙が溢れ出した。


「私……怖いの。本当の自分が分からなくて……私の中には、恐ろしい獣がいる。そう……なんでしょ?」


するとレオパードは、そっと目を閉じて首を横に振った。


「違う。白豹のプリンセスは……うららは恐ろしい獣なんかじゃない。私のプリンセスは……」

「お願い、レオパード。教えて。私は一体、何なのか。前世、白豹のプリンセスってどんな人だったのか……」


するとレオパードは一瞬、躊躇った顔をしたけれど……意を決したように、ゆっくりと話し始めた。


「前世、アルビンの白豹のプリンセスは……うららは、不幸な少女だった」

「不幸な少女?」


私は聞き返しながらも、何となくそう思っていた。

だって、私の中に現れた白豹のプリンセスのオオカミに対する憎悪……その激しさは、身を裂くほどの不幸の上にあるとしか思えなかったから。
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